こんにちは!温泉ソムリエの「モガミ」です!
さて、日本には数多くの温泉が存在していますが、実は温泉の泉質から周辺環境まで、何に注目するかを変えるだけで、それぞれが全く別物に見えてくるという面白さがあります。
今回は、温泉をあらゆる角度から分類する企画として、泉質や成分量、温泉の色やにおいなど「お湯」に注目した前回に続き、お湯がのどような場所で提供されているかなど「環境」に注目した分類を行いたいと思います。温泉を楽しんだり、自分にあった温泉を探す際の参考にしていただければ幸いです。
なお、「お湯編」については既に掲載している他、「利用目的編」も掲載を予定していますので、よろしければ、あわせてご覧ください。
環境に注目した分類
温泉の形態
露天風呂

露天風呂は、野外や屋外に設置された屋根や囲いのない風呂のことです。普段のお風呂は基本的に屋内のため、普段では味わえない解放感を味わえる他、山中や海辺など、場所によっては自然との一体感も味わうことができ、心理的リラクゼーション効果が期待できます。一方、天候や気温の影響を大きく受けてしまうというデメリットもあります。
内湯

内湯は、屋内に設置された風呂です。解放感は露天風呂に劣るものの、天候や気温の影響を受けにくい他、露天風呂と比較して、よりバリアフリー化されていることが多く、体が不自由な方にとってはありがたい面が多くあります。また、温泉の中には、ラドン温泉のように温泉の湯気を吸うことによる疼痛や呼吸器疾患などの緩和効果が期待できるものもあります(参照元)。湯気吸引による健康効果を期待するのであれば、湯気が拡散しやすい露天風呂より内湯が優れていますし、以前紹介した岩倉温泉(秋田県)のように自信を持って湯気をPRされている温泉もあります。
展望風呂
展望風呂は、ホテルや旅館の上階に湯舟が設置された風呂で、美しい海や山々、街並みなどの絶景を楽しみながら入浴することができます。また、朝日や夕日、夜景など、時間の変化を感じながら入浴できることも隠れた魅力の一つで、旅行で訪れた際は、夕空を見ながら1日の終わりを感じ、朝日を浴びながら新たな1日のはじまりを感じることができるでしょう。展望風呂があるホテルや旅館に宿泊された際は、是非、夕方と朝の2回入浴されてみてください。
展望風呂で有名な温泉は、箱根温泉の仙郷楼(神奈川県)などがありますが、以前本サイトで紹介した椿温泉しらさぎ(和歌山県)も美しい太平洋を眺めながら温泉に入ることができ、個人的なおすすめです。

洞窟・岩風呂

洞窟風呂は天然の洞穴や岩石を削って作られた浴場で、自然のダイナミックさを直接体感できます。岩肌に囲まれた空間は、まるで本物の洞窟にいるような感覚を味うことができ、自然との一体感を強く感じられます。また、基本的に岩に囲まれた湯舟は薄暗いことが多く、視覚的な刺激が少ないことから、独特の落ち着いた雰囲気を持っています。
有名な温泉は南紀勝浦温泉ホテル浦島(和歌山県)で、大規模な天然洞窟を利用した「忘帰洞」・「玄武洞」という洞窟風呂を有しておられ、複雑に入り組んだ大きな天然洞窟の中に湯舟や浴場が設置されています。
渓流風呂
渓流露天風呂は、その名のとおり渓流のほとりに湯舟があり、大自然や渓流のせせらぎに癒されながらの入浴は、まるで自然の懐に抱かれているような感覚であり、心理的なリラクゼーション効果が期待できます。ホテル祖谷温泉 (徳島県)などが有名です。
雪見風呂

冬ならではの贅沢である雪見風呂は、まるで山水画のような情緒あふれる雪景色を眺めながら温泉に浸かるという幻想的な世界を楽しめる温泉の形態です。一方、脱衣所から浴場、内湯から露天風呂への移動する際の大きな温度変化にヒートショックのリスクが潜んでいたり、床の凍結による転倒リスクなど、いくつかのリスクも潜んでいるため、特に高齢の方は一定の注意が必要です。
砂湯

砂浜に温泉が湧出している場所で温められた砂の中に首だけを残して体を埋める方法です。全身がじんわり温まり、砂の圧力がかかって発汗が促進されます。指宿温泉(鹿児島)などが有名です。
打たせ湯
滝のように落下する温泉に肩、首筋、腰などを打たせるもので、血流を良くし、筋肉のこわばりをほぐす効果が期待できます。筋湯温泉(大分県)の打たせ湯が特に有名です。
足湯
温泉街で見かけることも多い足湯は、タオルがあれば簡単に楽しむことができる気軽さと、体への負担の少なさ、血流が悪くなりがちで冷えやすい足を効果的に温めることができるメリットがあり、温泉の楽しみ方として広く普及しています。また、無料で利用できる場所が多いことも魅力の1つです。
浴槽・湯舟の材料
木材

木でできた浴槽の風呂を木風呂と言いますが、木風呂は独特の木の香りを楽しむことができる他、和の雰囲気や高級感に魅力を感じる方が多く、人気の材質の一つです。使用される木材はヒノキ、ヒバ、サワラなどが有名ですが、特にヒノキは比較的香りが強く、その香りにはリラックス効果が確認されている(参照元)ため、多くの方により充実した温泉体験を提供してくれる材質と言えるでしょう。
石・岩

湯舟に石や岩を使った風呂は、耐久性が高いことに加え、家庭の湯舟にはほぼ使わないであろう材質であり木と同様に温泉ならではの雰囲気や情緒を醸し出してくれることから、温泉施設では比較的よく採用されています。なお、石・岩を使った湯舟といっても、自然な岩肌を活かした荒々しい外観のもの、大理石風に滑らかに磨かれたもの、内部は快適な入浴のために磨かれ、外部は自然な岩肌を残すものなど醸し出している雰囲気は様々です。
セラミック・陶器

耐久性やメンテナンスが比較的容易であることから、セラミックや陶器も比較的よく湯舟に採用されている材質です。また、色や形のバリエーションが比較的広く、デザイン性に優れているという側面も持っており、壺湯のような独特な湯舟に使われているのをよく目にします。
立地
街中
街中の温泉の魅力は、何といっても便利さとアクセスの良さです。駅から徒歩圏内にあることが多く、車がなくても気軽に訪れることができる他、周辺の観光スポットや飲食店を楽しみながら、温泉で疲れを癒すことができます。名所めぐりやショッピング、食べ歩きなどに重点を置いた観光旅行をする方にとっては最も嬉しい立地です。ただ、一般的に街中に多くの温泉が湧いているケースは非常に少ないため、湯量や源泉かけ流し温泉にこだわる方にとっては目にかなう温泉が見つけにくい立地という側面もあります。
郊外
郊外の温泉旅館は、都市と自然の中間に位置し、両方の良さを享受できることが魅力です。都市の喧騒から離れつつも、完全な隔絶感はないのんびりとした雰囲気があり、また、街中に比べて広い敷地を持っている温泉旅館が多いことから、周辺の自然を活かした庭園や散策路などがあるケースも多く、ゆったりとした滞在に適しています。自家用車かレンタカーの方であれば、アクセス面で不便に感じる場面はあまり無く、観光旅行とゆったりとした温泉旅館の両方を楽しむことができる立地と言えるでしょう。
山間部

山間部の温泉旅館は、自然の中で最も温泉を楽しめる環境にあります。
都会の喧騒から完全に離れて心身ともにリラックスできる環境であることに加え、四季折々の景色を楽しむことができることが最大の魅力で、特に露天風呂がある場合は、新鮮な空気も相まって格別な癒し体験を得ることができるでしょう。なお、当然ながらアクセス面はあまり優れていない場合が多く、その場所に移動するまでの時間を要してしまうため、活動的な旅行で使用するには向いておらず、安らぎや癒し重視の方向けの立地と言えます。
また、森林浴には「緊張、疲労の気分緩和」、「活気上昇」、「ストレスホルモン(コルチゾール)の唾液中濃度の低下」、「血圧、脈拍数の減少」、「交感神経活動の低下」、「抗がんタンパク質増加」、「免疫能(NK活性)改善」等の効果があることが確認されており、温泉と相まって高いリラクゼーション効果や健康効果が期待できます。
※森林セラピーソサエティから引用
高原

高原の温泉旅館は、山間部と似た特徴を持ちつつ、高地にあるため、広大で開放的な景色を楽しめることが多い環境です。さらに場所によっては、ハイキングやスキーなど、季節に応じたアウトドア活動と組み合わせることができ、アクティビティと癒しを掛け合わせた充実した体験を得ることができます。
海辺

海辺の温泉旅館は、広大な海の景色と温泉を同時に楽しむという贅沢な体験を得ることができます。
なお、温泉の立地も入浴しながら海が見える位置かつ露天風呂であった場合は、まさに心が解放されるような開放感が味わえることでしょう。
さらに、温泉の縁が視覚的に消え、水面が周囲の自然景観と連続して見えるデザインになっており、自然と一体化したような感覚を味わえることが売りの「インフィニティ温泉」と評される温泉が全国に複数あります。海辺の温泉における究極の贅沢かと思いますので、興味がある方は是非訪問されてみてください。
また、新鮮な魚介類を楽しめることも非常に大きな魅力の一つとなります。
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