美肌効果を持つ温泉の泉質・特徴について【科学的根拠・エビデンス】

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管理人の湯めぐりウサギです。

さて、温泉には健康効果やリラックス効果、美肌効果など、様々な効果・効能が謳われていますが、今回は温泉の美肌効果をテーマに、科学的な根拠・エビデンスの有無についても注目しながら記事を書きたいと思います。

はじめに

はじめに、「科学的な根拠・エビデンスの有無について注目して」と書きましたが、読者の皆様に誤解の無いようにお伝えしておきたいことは、私は「科学的根拠が示されていない=嘘情報」とは全く考えておらず、この記事を読んでいただいている皆様にもそのように思わないでいただきたいと考えているということです。

温泉の科学的検証については、そもそも進んでいないというのが現状で、「科学的根拠が示されていない=嘘情報」ではなく、「科学的根拠が示されていない=検証・調査が追い付いていない」というのが正しいと考えています。

この記事でふれていない泉質についても、今までの長い温泉入浴の歴史や実際に入浴された方の実感などを裏付けとし、その温泉施設が「美肌効果が存在する」と謳っているとするならば、「それには一定程度の信憑性がある」という立場に私が立っている点はご理解いただきたく思います。

結論

結論から書くと、塩類系の泉質の温泉であれば、美肌効果を持っている可能性が高く、さらに源泉かけ流し温泉であれば、より効果が期待できると考えられます。

こちらは、泉質名や温泉の紹介文にあらわれる成分のみを抜粋して作った簡易な対応表ですが、温泉分析表などを見ないと数値が分からない成分についても効果が確認されています。その根拠とより詳細な情報については以下の項で記載します。

解決したい肌の悩み効果が期待できる温泉の特徴泉質名の例
肌の”ごわつき”や”くすみ”解決カルシウムやメタケイ酸が含まれている塩化物泉や硫酸塩泉「カルシウム-塩化物泉」、「カルシウム-硫酸塩泉」
肌のうるおい不足カルシウム系の塩類泉(塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉)「カルシウム-塩化物泉」、「カルシウム-炭酸水素塩泉」、「カルシウム-硫酸塩泉」
肌の”べたつき”解決鉄が含まれている炭酸水素塩泉や硫酸塩泉「含鉄-〇〇〇-炭酸水素塩泉」、「含鉄-〇〇〇-硫酸塩泉」

美肌効果を持つ温泉の成分・泉質の根拠

ポーラ・オルビスホールディングスの研究

化粧品メーカーとして有名なポーラ・オルビスホールディングスの取り組みとして、浴槽に注がれる温泉を採水し、化粧品研究の肌分析技術を用いたうえで、人の肌における美肌作用を評価し、作用が認められた施設に「美肌温泉証」を発行するというものがあります。2025年3月16日時点で46の温泉が認証を受けていますが、「美肌温泉ガイド | 温泉×肌サイエンス」では、以下の温泉成分が肌の改善効果が期待できる成分であると公開されています。

改善が期待できる効果関連性のある温泉成分
角層剥がれ具合
ごわつき・くすみ
カルシウムイオン
ストロンチウムイオン
塩化物イオン
臭化物イオン
硫酸イオン
メタけい酸
非解離成分
うるおい力
乾燥チクチク
カルシウムイオン
マンガンイオン
カリウムイオン
人工皮脂除去力
べたつき・毛穴
メタ亜ひ酸
マンガンイオン
鉄イオン
硫酸イオン
炭酸水素イオン
チオ硫酸イオン
引用元:美肌温泉ガイド | 温泉×肌サイエンス

美肌泉質と認証されている温泉の泉質を調査

また、ポーラ・オルビスホールディングスは、温泉が持つ美肌効果の特徴別に7つの「美肌泉質」を定義しており、前述の「美肌温泉証」はその美肌泉質別に発行されていますが、各美肌泉質の認証を受けている温泉は実際にどのような泉質なのか、温泉施設のHPやネット上に公開されていた温泉分析表をもとに私が可能な範囲で調査した結果、塩類系の温泉、pHがアルカリ性の温泉が多く含まれる結果となりました。

美肌泉質の名称と肌に対する効果のイメージ認証されている温泉の泉質
湯磨きピーリング温泉(すっきり・なめらか)アルカリ性単純温泉
メルティング浄化温泉(すべすべ・みずみずしさ)アルカリ性単純温泉
弱アルカリ性ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
弱アルカリ性ナトリウム含硫黄-カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉-塩化物泉
弱アルカリ性含硫黄-カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉
含弱放射能-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
ほぐしブースター温泉(しなやか・透明感)アルカリ性単純温泉
弱酸性ナトリウム−塩化物泉
弱アルカリ性ナトリウム-塩化物泉
単純酸性含鉄泉
美整リペア温泉(つるつる・透明感)アルカリ性単純温泉
弱アルカリ性ナトリウム・カルシウム・マグネシウム−塩化物・炭酸水素塩泉
弱アルカリ性ナトリウム−炭酸水素塩泉
中性単純温泉(メタケイ酸豊富)
アルカリ性ナトリウム ‒ 炭酸水素塩・塩化物泉
ナトリウム ‒炭酸水素塩・塩化物温泉(メタほう酸豊富)
中性含鉄‒ナトリウム‒塩化物泉
バリア・オアシス温泉(うるおい・つやつや)アルカリ性単純泉
弱酸性単純泉
酸性-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉
アルカリ性ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
弱アルカリ性カルシウム・ナトリウム-塩化物泉
含放射能ナトリウム・カルシウム・塩化物・硫酸塩泉
弱アルカリ性ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物温泉
エクスプレス潤化温泉(ツヤ弾力感・ふっくら)アルカリ性単純温泉
弱アルカリ性ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物温泉
引き締めパック温泉(もちもち・クリア)弱アルカリ性ナトリウムー塩化物温泉
引用元:美肌温泉ガイド | 温泉×肌サイエンス※泉質は該当する温泉施設のHPなどから可能な範囲で調査

(補足)日本三大美肌・日本三大美人の湯の湯

ちなみに、誰が言い出したのか、日本三大美肌の湯・日本三大美肌の湯という概念がありますが、各温泉の代表的な泉質を調べてみると、非常に興味深いことに、上述の研究結果と非常に近い傾向が出ました。

カテゴリー温泉地代表的な泉質
日本三大美肌の湯嬉野温泉(佐賀県)ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
喜連川温泉(栃木県)ナトリウム塩化物泉
斐乃上温泉(島根県)アルカリ性単純温泉
日本三大美人の湯川中温泉(群馬県)カルシウム硫酸塩泉
龍神温泉(和歌山県)ナトリウム炭酸水素塩泉
湯の川温泉(島根県)ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉

美肌効果と源泉かけ流し温泉・塩素消毒の関係性と根拠

人間の皮膚は年齢とともに酸化していきますが、一般的な温泉水は酸化の逆である還元系の性質を有しており、肌の老化を抑制させる可能性が高いという論説があります。

これは、長野県の野沢温泉(アルカリ性硫黄泉)を舞台に実際に研究がされており、錆びたり腐敗したりする「酸化」とこれを抑制する「還元」を測定できる「酸化還元電位(ORP)分析法」という手法を基に行われましたが、①塩素殺菌によってORPの数値が低下したことや、②好成績を出した温泉は昔ながらの「源泉かけ流し」方式が多かったこと、③源泉かけ流しの浴槽で肌への入浴効果の測定を実施した結果、モニター60人の約90%にアンチエイジング効果が見られたこと、が報告されています。

なお、塩素消毒については、前述の温泉の還元力の毀損に加え、皮膚バリア機能の破壊(天然保湿因子(NMF)の減少)につながるとの報告もあります。もちろん、「塩素消毒・非かけ流し=すべての美肌効果が毀損される」とまで言い切れはしませんが、以上の研究結果から、少なくとも美肌効果を期待するのであれば、「塩素が入っていない温泉であるに越したことはない」とは言えるのではないでしょうか。

その他の美肌にまつわる研究

その他、温泉と美肌に関する研究結果について、面白い実験を見つけましたので、参考に紹介します。

山口大学大学院の湯田温泉における実験

2021年12月に発表された論文「Comfortable and dermatological effects of hot spring bathing provide scientific evidence for the efficacy of balneotherapy」では、山口県の湯田温泉(アルカリ性温泉(pH 9.3)のナトリウム塩化物泉)への21日間の入浴により、冬の肌荒れ状態にあったカピバラの皮膚の水分(肌のうるおい)、メラニン、紅斑の値が夏季レベルまで改善した事実が示されました。こちらの泉質も塩類系のアルカリ性温泉という前述の温泉と同じ特徴を持っています。

マンダムの明礬温泉研究

大分県の明礬温泉(酸性硫黄泉)に多く含まれる温泉成分「アルムK」がヒト表皮角化細胞の増殖を促進することがセルフ販売による化粧品を展開している株式会社マンダムによって証明されています。ここまで紹介されてきた温泉の泉質はアルカリ性の温泉ばかりでしたので、酸性の温泉に美肌効果が無いと思われる方がおられないよう、酸性の温泉においても美肌成分が含まれている例として紹介します。

注意点

温泉が肌に与える良い効果について記述してきましたが、温泉には様々な成分が含まれていますので、肌が弱い方は特に、一般的に肌に対する刺激が強いとされる硫黄泉、強酸性泉、強アルカリ性の温泉などに入浴する際は注意が必要です。

温泉入浴により肌に何らかの違和感を感じた場合は、入浴をやめ、場合によっては医師等専門家の意見をいただかれるようにしてください。

最後に

以上、温泉と美肌については様々な研究が進んでおり、具体的な調査結果を総合すると、「塩類系の泉質を有しており、かつ源泉かけ流し温泉であれば、美肌効果が強く期待できる」という結果が見えてきました。

ただ、温泉というものを語るうえで非常に難しいのが、温泉には様々な成分が含まれており、その成分の有無や濃度が各温泉によって全く異なるため、結局は1つ1つの温泉ごとに調査しないと各温泉に本当に美肌効果があるのか断言することはできなく、さらに温泉と同じく人の肌の性質もそれぞれですので、最終的にはその温泉が自分に合う温泉であり、良い効果を与えてくれるかは入ってみないと分からないということです。

科学的なエビデンスについて注目しながら記事を書きましたが、結局のところ、これらの情報は温泉選択の参考にはなるものの、真に効果があるかどうかについては、実際に温泉に入ってみて、自分の目と感覚で効果を測るしかないのではないかと思います。

参照元

野沢温泉、入浴で若返り効果! – 観光経済新聞

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入浴水中の遊離残留塩素は、アトピー性皮膚の角質層の保水能力を低下させる – PubMed

マンダム、温泉成分として知られるアルムKがヒト表皮角化細胞の増殖を促進することを発見 ~肌の本来の力を引き出し、ふっくらとハリ密度が整えられた肌を目指して~|2023(令和5年)|ニュースリリース|株式会社マンダム

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